2015年09月05日
新電力から原発15基分 企業、自治体の大手離れ 自由化以降8万件超
二〇〇〇年三月の電力自由化以降、電力の購入先を大手電力会社から新電力へ切り替えた企業や自治体などが、今年六月末時点で少なくとも約八万四千件に
上ったことが本紙の調べで分かった。契約規模は約千五百万キロワットに上り、原発十五基分の出力に
相当する電力が大手電力から離れた。 この動きは、東京電力福島第一原発事故をきっかけに加速。原発が止まった大手各社が電気料金を値上げしたためで、
多くの顧客が割安な新電力へ流れる傾向が続いている。 (岸本拓也)
電力使用量の大きい工場などの大口の利用者は電力自由化以降、電力会社を選んで購入できるようになった。 当初はコンビナートなど大工場だけだったが、
その後スーパーや町工場などにも対象が拡大。一般家庭は一六年四月から自由化される。 新電力にはガス会社や丸紅などの商社、石油元売りなどが参入している。
本紙が大手電力十社に自由化後の解約状況を問い合わせたところ、東電、関西電力、中部電力の大手三社だけで解約件数の八割に当たる
六万七千八百件(千二百七十万キロワット)の 契約を失っていた。
最も多かった東電は四万六千件(八百五十万キロワット)が解約。内訳をみると原発事故以降に解約が加速しており、
一一年三月末時点から三万一千三百件(四百三十万キロワット)が新電力へ移った。一二年四月から企業向け料金を平均14・9%値上げしたことが大きく影響したほか、
「値上げは事業者の権利」(西沢俊夫元社長)とする発言への批判も高まり、解約が急増した。
関電は今年六月末時点のデータ提供は拒否したが、三月末時点で一万二千五百件(二百六十五万キロワット)が解約。
一三年四月に続き、今年四月にも料金を値上げをしたため、「離脱の流れは変わっていない」(関電幹部)状況という。
同じく原発事故後、二度の値上げをした北海道電力でも解約数は、事故前の八倍以上に膨らんだ。一方、値上げしていない
北陸電力は百二件(一万キロワット)にとどまり、 原発のない沖縄電力ではゼロ件だった。
<新電力> 正式名称は「特定規模電気事業者(PPS)」。太陽光や火力など自前の発電所や、自家発電設備のある工場から余剰分を買い取って調達した電力を割安で販売する 小売事業者。2000年から、工場や企業など大口需要家向けの電力小売りが自由化され、新規参入が認められた。今年8月時点で734社が国に届け出ている。
出典:東京新聞Web版:2015/09/05