2015年07月28日
電力の温暖化対策、つばぜり合い激しく 経産省と環境省
電力業界による温暖化対策の自主目標を巡り、経済産業省と環境省とのつばぜり合いが激しくなってきた。 石炭火力の新増設計画が相次ぐためで、環境省が27日に都内で開いた有識者会合では、目標の実現性を疑う声が続出した。 業界側は現時点で目標を大幅には変えない方向で、経産省も業界の取り組みを後押ししている。両省の溝は深く調整は難航必至だ。
「(自主目標は)破綻するリスクが大きい」
「経済的な規制的手法も含めて強制的な制度を準備すべきだ」
27日の環境省の有識者会合では、電力業界が示した2030年時点の温暖化ガス削減の自主目標への異論が目立った。
業界不信の背景にあるのは二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力の新増設計画だ。
経産省は30年時点での望ましい電源構成(ベストミックス)で、石炭火力の割合の見通しを全体の26%と置いた。
だが、環境省の試算では石炭火力の計画は計1700万キロワット分ある。すべて稼働すれば30年で約4割と大幅に超えるとみている。
電気事業連合会と新電力は30年度の電力販売量1キロワット時当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を、13年度に比べ約35%削減し約0.37キログラムとする自主目標を掲げた。
ただ、会社別の個別目標や総排出量はなく、環境省は電力業界の自主目標を「実効性を担保するための施策が見えない」(幹部)と指摘する。
電力業界との溝は深い。大手電力にとっては、原発の再稼働の日程や規模が固まらない中で計画の詳細を固めるのは難しい。
電事連の八木誠会長は「まず業界全体の目標を作ったことに意義がある。今後は毎年、実効的なものかをチェックしていくことで目標達成につなげていく」と話す。
愛知県の建設計画に携わる関係者も「国内の石炭火力で最高水準の発電効率を目指しており、電源構成で重要な役割を担う。
(異議が出たとしても)計画通り進めるしかない」と漏らす。
経産省は省エネルギー法の規制強化で、発電効率の低い石炭火力の建設を抑える検討を始めている。
電力業界の計画の見直しには踏み込まず、発電効率の高い火力の建設だけを認めて老朽火力からの転換を促すことで理解を得たい考えだ。
出典:日経新聞電子版:2015/07/28